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福岡地方裁判所 昭和49年(わ)84号 判決 1974年6月10日

本籍

福岡県遠賀郡岡垣町大字山田一一六番地の四

住居

右同所

会社役員

山形吉信

昭和二年一月二三日生

所得税法違反被告事件

検察官

加納真澄出席

主文

被告人を懲役八月および罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡県遠賀郡岡垣町大字山田一一六番地の四において、山形種鶏孵化場という商号を用いて種鶏孵化業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、

第一、昭和四五年分の真実の所得金額は、二二、二五一、六三四円、これに対する所得税額は、一〇、〇五五、〇〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、初生ヒナおよび食卵の売上げを除外して、その売上金を簿外の預金とするなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年三月一五日、同県北九州市若松区白山一丁目二番三号所在の若松税務署において、同税務署長に対し、当年分の所得金額が一、二四〇、一八一円、これに対する所得税額が六九、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により当年分の所得税額九、九八六、〇〇〇円を免れ、

第二、昭和四六年分の真実の所得金額は、五八、〇三八、八七四円、これに対する所得税額は、三一、九三〇、七〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、初生ヒナおよび食卵の売上げ除外、成鶏の売上げの翌年分への繰り延べ、飼料の架空仕入れならびに翌年におけるヒナの仕入れを当年分の仕入れとして繰り上げるなどの操作をなし、右売上金等を簿外の預金とするなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一四日、前記若松税務署において、同税務署長に対し、当年分の所得金額が六、一九八、八七八円これに対する所得税額が一、三一七、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により当年分の所得税額三〇、六一二、八〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき、

一、被告人の当公判廷における供述および第一回公判調書中の供述部分

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通

一、被告人作成の預金関係確認書

一、竹藤カヨ子、刀根真知子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、力丸治、的場昭光、城戸愛子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、木徳株式会社大阪営業所長森谷昭八作成の上申書

一、杉原萬次の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、被告人および税理士杉原萬次作成の、「初生ヒナの売上除外について」、「鶏卵売上高について」、「生計費等、事業主勘定について」、簿外資産および簿外負債について」と題する各上申書ならびに預金関係確認書

一、大蔵事務官小原香作成の「昭和四五年分」脱税額計算書(判示第一の事実)

一、押収してある、昭和四五年分所得税の確定申告書一綴(右同、昭和四九年押第四八号の四)

一、大蔵事務官小原香作成の「昭和四六年分」脱税額計算書(判示第二の事実)

一、押収してある、昭和四六年分の所得税の確定申告書一綴(右同昭和四九年押第四八号の六)

一、押収してある、卵、食鳥売上帳一冊(前同号の一)および別口売上帳(前同号の二)

(法令の適用)

一、判示各所為 所得税法第二三八条第一項

一、刑の併科 懲役刑および罰金刑を併科

一、併合罪加重 刑法第四五条前段、第四七条本文(懲役刑につき)第一〇条(犯情の重い判示第二の罪の懲役刑に加重)、第四八条第一項、第二項(罰金刑につき)

一、換刑処分 同法第一八条

一、執行猶予 同法第二五条第一項(懲役刑につき)

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡田良雄)

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